OHTOのボールペンにハマる(ハメられる)など。
私が住まう武蔵小金井には、学芸大学など学校が多いせいか、文房具屋がとても沢山ある。パッと行ったことのあるところを書き連ねてみても、日進堂文具店、菊屋文具店、TSUTAYAの文具売り場、文教堂の文具売り場、ドンキの文具売り場、ヨーカドーには文具売り場とMUJIがある、といった具合である。
そしてもう一店外せないのが、一番レトロでありつつ一番尖った店、中村文具店である。
店構えからしてもうね。
有名なので私ごときが説明するまでもないが、デッドストックのノートやペンなど、拘りの品がぎっしり並んでいる、素敵なお店である。
中村文具店で買ったデッドストックのボールペン
数日前に初めて入店したのだが、その際に、何の気なしにパイロットのデッドストックのボールペンを買ってしまった。デッドストックといっても安いペンである。中の芯は、新品に交換してくれている。
BICとか色んなところが同じような形で出している、昔からよくあるノック式である。しかし、この懐かしいシェイプ、そして品のあるプラスチックのボディにやられた。
私の中で何かスイッチが入った。
つい先日、私は「ペンはもう一生エナージェルでよい」という記事を書いた。なのに、このグッドデザインのボールペンを手に入れた途端、何かスイッチが入って、他のボールペンも気になってしょうがなくなっちゃったのである。
それじゃまるで、器量のよい女房を見つけて入籍した途端、他の女性が気になり始めてあちこちで浮気を始めた亭主みたいである。が、私はぺんてるに婚姻届を出したわけでも何でもない。よってセーフ、と、都合良く解釈したのである。
そんなきっかけから、先日、三鷹の日本堂で見かけて一度はスルーしたボールペンが、どうにも気になって結局購入してしまった。OHTOの「アメリカンテイスト」シリーズの中の1品である。インクは油性。
持ったとき非常にバランスのよい重さ。税込540円とは信じられない質感。よくわかりませんがこういうのを「アールデコ」というんでしょうか。わからんけど、OHTOのデザイナーは天才かと思った。
そして次に吉祥寺のヨドバシで見つけたのがこれである。同じくOHTOの「レイズ」。インクはゲルインクである。
メタル部分に対して絶妙のバランスで安っぽいプラスチックの配色の妙。よくわかりませんがこういうのを「ミッドセンチュリーモダン」というんでしょうか。わからんけど、OHTOのデザイナーはクソ天才かと思った。
こうなるとOHTOのボールペンが気になって気になってしょうがないので、さらに調べて、amazon経由でこれも買った。「レザーペンコレクション」シリーズの中の1品である。インクは油性。
ストライプ加工のメタルとレザーがクラカメを彷彿とさせる。これ500円でいいんですか。よくわかりませんがこういうのを「レトロフューチャー」というんでしょうか。わからんけど、なんていうか、どストライクである。
が、しかし。
もうOHTO天才過ぎ!と狂喜乱舞していたが、よくよくネットを調べるにつれ、わかってきたことは、アメリカンテイストの私の買ったモデルは、モンテベルデというメーカーのインティマ、というボールペンに「よく似てる」らしいし、レイズは、パーカーのジョッターに「よく似てる」らしい。レザーペンのやつも、現時点で見つけてはいないが、こうなると何かオリジンがあるんだろな、という気がしてしまう。
なんだガッカリだぜ!と思ったかというと、実はそうでもない。
OHTOは発明のメーカーだった。
メーカーの名誉のために述べるが、実はOHTOは、日本で初めて量産型ボールペンを発売したメーカーである。さらに、グリップ部分に初めて滑り止めのゴムをつけたのもOHTOだし、ペン先のニードルポイントだってOHTOの発明、なのである。実際、上記で紹介した全部のペンが(オリジンとは違って)拘りのニードルポイントである。
そんな、常に他社に先駆け、ボールペンに力を入れていた歴史のあるOHTOなので、ジェネリックボールペン量産行為に関して、諸手を挙げてオッケー、とも言い難いがここは、グッドデザインのボールペンをオマージュしたコレクション、と好意的に理解したいのである。実際、現行品のジョッターよりレイズの方がマテリアルが好みだし。
それに何より、ここまでデザインに凝ってる国産メーカー、今あまりないよね。どれもこれも「事務用品」もしくは「学生向け」といった風貌だし。まあ、そういう時代なんだろうけど。
というわけで、メーカーに経緯を表して、OHTOの現在のフラッグシップモデルとも言える「セルサス」も買いました。これは水性ボールペン。
適度な太さと重さ、水性かつセラミックボールの採用で滑らかな書き味。この質感で1,450円。ていうか、今日紹介したペン、全部合わせて3,000円くらい。OHTO・・・全く。
いい大人が筆記具に拘ろう、となると、ペリカンだパーカーだLAMYだ、と舶来製品に走りがちだと思うのだけど、国産のボールペン、売れに売れまくっているジェットストリームに限らず、国内の各社、インクについては海外製品の追従を許さないレベルに達していると思う。ボールペンってこんな安い日常品なのに、実はかなり凄い技術の結晶なんだよね。だからこそ、国産品の残念なデザインが勿体ないなあ、と思う。なので今後も、素敵なデザインの国産品を見つけたら是非手にしたいと思ってます。
というわけで、ボールペンにすっかりハマってしまった、という話でした。
安いボールペンだけですからね。文具マニアではないのだ。断じて。
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