何としてもこれはレコードで聴け、なアルバムたち
あけましておめでとうございます。
昨年末にこんなニュースがありました。
今どきの音楽の消費のされ方は、ライトな音楽好きは無料ストリーミングサービス、少し音楽好きって人は有料サブスク、真の音楽好きは有料サブスクで、気に入ったものがあればレコードを買う、という感じなのかなと感じています。
そんなわけで私自身が、Apple Musicでも聴けるのだけど、これはやっぱりレコードで聴きたいと感じて購入し、実際当たりだったレコードを数枚紹介します。
1. AMY WINEHOUSE / BACK TO BLACK (2006)
2006年発表の彼女のセカンドアルバムであり、彼女の生前最後のアルバムであり、名盤中の名盤。
まずこれは、サウンドプロダクションが完全に「レコードで聴いてよ」と言ってますね。案の定、アナログ化しても綺麗に一枚に収まるサイズで。
そしてCDやデジタル配信以上に、レコードで聴くと感じるのは、これはノーザンソウルなんかのサウンドもたっぷり受け継いだブリティッシュコンテンポラリーミュージックだ、ということをひしひしと感じるんですよね。まさにイギリスから出てくる音楽だわ、と。
今回の趣向的に、内容とかアーティストについて詳しく語るのは割愛しますが、A面が「Love is a losing game」っていう世紀の名バラード曲で終わって、何とも言えない余韻に浸れる瞬間。最高かよ。
EU盤と米国盤で何故かラストナンバーが違っているのですが、このEU盤の「Addicted」で終わってくれなきゃ絶対に締まらない一枚。
2. BRUNO MARS / 24K MAGIC (2016)
二枚続けてグラミー賞受賞作が続いたのは偶然か。いや、いいものはいいのです。
2016年発表のサードアルバム。80年代風サウンドにアース・ウィンド&ファイアーやマイケル・ジャクソンそしてジェームス・ブラウン、あとはあの時代のやたら甘いバラードのエッセンスを注入した、これまた完全にプロダクションが「レコード前提」に違いないと言って過言ない一枚。正直、このアルバムもぶっ通しで九曲聴かされるとちょっとくどいんですよね。こうしてレコードで聴くとA面B面のバランスが最高で、曲順もいい感じにまとまってます。あと、近年プレスされたレコード作品全般に感じることですが「音がいい」。レコードからCDに移行したのって、時代の流れもあったのだけど、明らかに衰退期はレコードの音質が随分落ちてたんですよね。透けて見えるほど盤が薄かったり(ホントですよ)。マスタリングとかも随分適当だったのかも知れません。最近プレスされるものは本当に、仕事が丁寧に感じます。
このアルバムのサウンドは腰に来ます。おっさんなのについつい踊ってしまいます。しかしそれも20分くらいが限界なので、やっぱりレコードが丁度いいんですよ。個人的にはレッド・ツェッペリン初期のレコードで見慣れたATLANTICロゴのレーベルが素敵な一枚。
3. TEARS FOR FEARS / THE SEEDS OF LOVE (1989)
昨年秋にリリース30周年リマスター盤が発売された、1989年発表の彼らのサードアルバム。
確かレコードからCDへの移行期って87〜88年くらいで、このアルバムもオリジナルリリースはCDだったと思う(少なくとも自分はCDでしか買えなかった)んですが、実際レコード化されてみると、A面は26分と、レコードとしては結構ギリギリの長さ。ランアウト(最終曲の後の空白部分)もかなり短く、A面ラスト曲の余韻も早々に針が上がります。そこだけはちょっと惜しく感じます。
彼らのセカンドアルバムも傑作なんですが、そちらはオリジナルリリース自体がレコードなので、今回はこちらを選びました。このアルバム、ボーカルが物凄く良くて、そのボーカルの良さと、特にA面二曲目「Badman's song」あたりに顕著な、バックの緊張感溢れる演奏が、レコードでは存分に味わえます。この感覚、文章で伝えるの難しいので、是非聴いてみて欲しいです。これが1989年なのも改めて驚きだし、2021年の今、全く古く感じないのは本当に凄い。
4. NICK HEYWARD / WOODLAND ECHOES (2017)
ヘアカット100のリードボーカルとして、デビューアルバムが世界的に大ヒットした後、早々に脱退してソロではネオアコの名盤「NORTH OF THE MIRACLE」をリリースし、その後はポツポツとソロアルバムを出すも1998年の「APPLE BED」以降ほぼほぼ目立った活動がなく、自主リリースで2006年にアルバムリリース後、2017年に十一年振りにリリースされた九枚目のソロ。内容は特大ホームラン。
言ってみたら彼は、昔ながらのポップス職人・天才肌のソングライターだと思っているのですけど、やはりそういう音楽にはレコードのフォーマットが合っているんです。ヘアカット100、彼のファーストソロ、どちらもレコードで何回聴いたかわからないんですが、CDやデジタル配信でぶっ通しで聴かされても「コレジャナイ」感が半端ないのです。2017年に発表のこのアルバムも同じ。B面二曲目の「I can see her」とか、通しで聴くとうっかり聴き流しちゃうんですが、B面のこの位置で流れると滅茶苦茶素敵に響くわけです。A面六曲、B面六曲のこのフォーマットでこそ完成する、そんなアルバムです。
自分の五十歳の誕生日の翌週にビルボード東京でニックのライブがあり、バースデーメッセージ入りのサインを貰いました。生きてるうちにニックと話が出来るなどと思っておらず、滅茶苦茶感動しました。
5. TAYLOR SWIFT / FORKLORE (2020)
これについては前回大いに書かせて頂いたのでそちらを参照頂きたく。名盤。
レコードの良さ(全くの私見ですが)
Apple Musicで音楽を聴く場合、それはそれは簡単で、ポケットからiPhone出してライブラリから選んで再生ボタンを押した途端に音楽がスタートするわけです。レコードだとそうはいかなくて、ジャケットから丁寧に盤を取り出してターンテーブルに乗せる、スタートボタンを押すとゆっくり針が降りて数秒の無音の後にようやく曲が始まり、二十五分足らずでA面が終わる、そしたらお茶なんか飲み干した後に、レコードをひっくり返してB面をスタート。同じく二十五分足らずでB面が終了。それを手間と感じるかどうかはさておき、それぞれのタイミングに訪れる無音の時間、これが音楽をより引き立てるのですよね。
同じ物理メディアであるCDならそんなに変わらないんじゃないの?という話ですが、CDはモノとして軽すぎるんですよね。あれをプレイヤーに入れるときの、プラスティックのカチャンカチャンという音、それだけで物凄く興醒めしてしまいます。そして、ぶっ通しで全編聴くには、正直長すぎるのです。90年代に名盤と言われるアルバムが少ないのは、それも大いに関係していると思ってます。
レコードの音についてですが、個人的にはCDやデジタル配信よりも中低音域が豊かでいい音がする、と感じますけど、そこは正直、聴き分けられるレベルなのかどうかはわかりません。ただレコードで聴くということはその所作も、音も含めて、ただただ「心地よく」感じるのです。
今レコードが売れているのは、単なる懐古主義ではなく、そのあたりの心地よさを、古い世代は再発見し、そして新しい世代は未体験の感覚として認識し始めてるのではないかと思います。
個人的にはCDなんてものは無かったことにしてしまいたいくらいレコード最高、と思っています。
ただレコードはやはり場所を食うので、厳選したコレクションに留めたいなあ、とは思うところです。まだ欲しいレコードは沢山あるのですけど。
それではまた。
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- アーティスト:Taylor Swift
- 発売日: 2020/11/27
- メディア: LP Record