「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。」を読んだ。
昭和の未解決事件として名高い「三億円事件」。
三億円事件発生から50年目の今年、実行犯本人と名乗る人の手記が、インターネットの投稿小説サイト「小説家になろう」で公開された。
ちょいちょい引用させて頂いて恐縮だが、ザ・コレクターズのギタリスト、古市コータロー氏は、昭和のミステリーを追っている人物としてファンの間では有名である。その氏が、ポッドキャスト「池袋交差点24時」のシーズン7、第97話「三億円事件再燃の巻」で、この手記について語っていたことで、その存在を知った。
ザ・コレクターズのポッドキャスト「池袋交差点24時」アーカイブ
ポッドキャストが公開された日には既に、「小説家になろう」上、投稿が削除されていて(一時的?)読めなかったので、書籍化決まったのかな、とは思っていたが、その後、経緯を気にすることもなく、過ごしていた。
と言う程度に、大した関心はなかったわけである。
突然のLINE。
したところ先日、何の脈絡もなく、友人の宮氏からLINEが来た。どういう経緯があったのかは知らないが「三億円事件の第四現場って、ぎゃんごさんちの近くみたいですよ」と突然、ニュース記事の写真と照らし合わせた地図をよこしてきたのである。
え、ここ知ってますわ。確かに近いし、春先この辺は桜が綺麗なので、カメラなんか持ってふらふら散歩して、この辺りで突き当たりになるので、煙草なんかふかして毎年一息ついてる辺りなのである。
こうなると面白いもので、俄然身近になり、興味が湧いてくる。事件は1968年12月の出来事だが、1968年は私の生まれ年であり、事件発生時は赤ん坊なので勿論知らないが、自分が小学生の頃くらいまではまだまだ事件も捜査中で、恐らく昭和50年の時効成立前後は、度々ワイドショーなどで取り上げられていた記憶もあり、まさに昭和の大事件だったのである。
そんな経緯から、本日ついに、書籍を購入した。
まず昼に家を出て、第四現場付近を散歩。それから本屋に向かい、本屋を出たその足で最寄りのパン屋にイートイン、読み始めた途端、面白くて一気に読み切った。
事件の概要についてはWikipediaに詳しいので、事件について知らない人はまずそれをさっと読んで頂いて、それからこの本を読んでみて頂ければと思う。
ミステリーの真相に迫りたい、完全犯罪の謎に迫りたい、そういう向きには期待外れかも知れない。ただ、自分には、これはとてつもないリアリティを持った話に映った。Wikipediaに掲載されている情報の点と点が、スッキリと繋がる感覚を味わえるはずだ。フィクションだとしても、なかなか良く出来ている話だ。
読み終えると夕方。帰り道、再び第四現場に足を運んだ。現場に佇み、煙草をふかして想いを巡らせる。犯行より前、犯人はここに何度足を運んだだろう。そして50年前の12月10日に、ここで現金をジュラルミンケースから取り出し、逃走用の車に移し換え、ここを後にしたのだと。
果たして真贋の如何は。
実行犯本人の手記かどうか、それは読んだ人の判断に委ねるよりない。ただ、自分は、これが真実であって欲しいなあ、と思った。
本の中に、こういう一節がある。
「人生を賭ける理由が、恋愛の他にあるでしょうか。」
この昭和の大事件の、真の動機がそれ?と、思う人もあるかも知れない。けれども、僕はこの一文に、とてもリアルを感じる。あとは兎に角、運があった、というか運命なのか、そういうことだと思う。何にせよここに書かれたような日々を経て、事件の時効、その後昭和63年に民事の時効も経て、50年。こうして手記を発表出来たことが本当であれば、これはまさに、サバイブの見本みたいな人生であったというしかない。リスペクト。
Amazonで三億円事件を検索したら、これも三億円事件に関係ある話なの?観なくちゃ。